「転職シーズン」と言われる９月に入った。今年はコロナ禍の影響もあり、物流事業者への異業種からの応募が増えることが予想される。そんな中、「今度、初めて運送会社の面接に行きます。スーツで行くべきでしょうか」――。ＳＮＳ上に投稿されたこの質問に、様々なアドバイスが飛び交った。ドライバー職の面接では、スーツを着ていくべきか、それとも作業着か、はたまた私服かー。応募者側と採用側それぞれに話を聞いた。

ドライバーのアドバイスで多かったのは、「悩んでいるならスーツが無難」という意見。あるドライバーは、「一般論で言えばスーツ。 仮に『未経験者１名募集』という採用枠に２人が面接に来るとして、１人がネクタイを締めて黒髪、 もう１人が茶髪にハーフパンツでピアスだったら、担当者は前者を採用するはず」と分析する。

他のドライバーからは、「私はスーツで行ったが制服がない会社なら、カジュアルな服装でも大丈夫」という声が聞かれた。中には、「スーツで行って採用され、後日、先輩に『銀行員かと思った』と言われた」というエピソードも。
一方、「作業着やきれい目の私服」という声も多かった。「自分は私服。これまで『スーツじゃないの？』って言われた運送会社はなかった」など。

「年齢や経歴、保有資格に左右されるのでは」という意見も。「若い頃はポロシャツとジーパンで行っていたが、５０代という年齢や運行管理者などの資格を所持していることから、ドライバー希望で行っても、内勤を勧められる可能性があるため、今ならスーツで行く」。

今回のアンケート調査では作業着や私服は少数派となったが、「現場作業にスーツは不釣り合い」という声も根強かった。「今までの面接はすべて作業着で臨んだ」というドライバーは、「自分の中では『サラリーマンはスーツ』『運転者ら労働者は作業着』というイメージ」と話す。

また、「以前勤めていた会社の作業着で面接に行った」や「現在の勤め先の社名入りの制服とトラックで行った」という猛者も。「スーツで運転経歴証明を持って面接に行ったら、『こんな人初めて』と言われた。ジャージとかスウェットが大半らしい」というドライバーもいた。

「面接どころか『通勤もスーツ』という運送会社はあるし、『スーツで面接に来たら落とす』という会社の噂も聞いたことがある」「スーツを着て面接に行った会社は駄目で、軽装で行った会社にはご縁があって今も勤務している」「何も気にせず私服で行ったが、服装より経歴の方が重要では」など、「応募先企業の考え方や社風によるのでは」という声も多かった。

「面接官も担当している」という運送会社の社員からは、「スーツの方がしっかりした人に見えるが、当社は中小企業なので、 スーツを着てくる方がいると、『ちゃんとしすぎてて、うちの社風に合うかな』と不安に思うこともある」と明かす。「やはり、会社の規模によるのでは」ということだった。

面接時の服装　経営者側の意見

茨城乳配（茨城県水戸市）の吉川国之社長は、「ドライバー職の面接希望者で、スーツ姿は少ないが、ジャージ、短パン、スウェットなどは、そういう意欲と考えて選考理由に加えている」と説明。「正装である必要はないが、身だしなみに清潔感を感じられる方を採用対象にしている。なぜなら、それがその人の価値観なので、我々の価値観との相違は確実だと考えられるから」だという。

船井総研ロジ（東京都千代田区）の橋本直行取締役も、「服装は評価に含めるべき」と語っている。「服装がまずい人は、相手の気持ちが分からない、今求められていることが分からない、相手への敬意や謙虚さ、貢献意欲がない人だと考えることができる」と指摘。「スーツを着てきたというのは、ポイントアップ要因。ただし、スーツでなくても、応募先企業への敬意を感じる、小綺麗な身なりなら良いと思う」としている。