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    違法な長時間労働で再度是正指導 社名公表の影響

    2017年9月19日

     
     
     

     9月4日に愛知労働局(木暮康二局長)は、違法な長時間労働で是正指導したのにもかかわらず、その後も改善しなかったとして、大宝運輸(小笠原忍社長、名古屋市中区)の社名を公表し再度、是正指導した。従業員数約1000人をほこる老舗企業の社名公表と記者会見する光景に、県内はもとより全国の運送事業者に大きな衝撃を与えた。今回の件について、関東・中部・九州の運送事業者に率直な感想を聞いてみた。
     今回の社名公表に至った経緯を振り返ると、県労働局は昨年12月から今年2月の立ち入り調査で、2事業所での長時間労働を確認。12月に是正指導、2月にも経営幹部を呼び出して指導した。7月には改善状況の確認のために調査を実施したところ、労働基準法第32条(労働時間)違反で改善していないとして、社名公表と是正指導することとなった。「過労死ライン」とされている、1か月80時間を超す時間外・休日労働の該当ドライバーは、全体の2割にあたる84人で、うち74人は月100時間超。最長で197時間のドライバーも存在した。
     同社では、営業拠点の分散配置やドライバーの採用活動の強化、取引先との解約、1事業所の閉鎖、職場環境の改善などに取り組んできたが、深刻なドライバー不足を背景に抜本的な解決には至らなかった。今年の7月までに17人を中途採用したが、定年を含めた諸条件も重なり、29人が退職した。改善基準告示で定めている年間拘束時間の限度である、3516時間内で労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を締結していたが、ドライバー不足や季節波動、荷主との関係性など複合的要素が絡みあい、36協定を超えてしまう結果となった。


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     小笠原社長は「経営の最優先課題と位置付け、改善を断行する」と決意を表し、小笠原社長自らが委員長を務める社内プロジェクトチームを発足させ、長時間労働の削減に向けた取り組みを開始。また、県労働局の木暮局長は業界全体での取り組みを求めた。
     社名公表は、複数の事業所を持つ大企業が、1事業所につき従業員10人以上に長時間労働をさせた場合が対象になり、これまでの月100時間超から、1月には80時間超に厳格化され、基準を見直して以降、初のケースとなった。厚労省労働基準局監督課過重労働特別監督第二係の担当者は、「今回の企業名公表はトラック運送業を狙ったわけではなく、全産業の調査を行う中で特に状況が悪かったのが大宝運輸だった」と説明する。
     小笠原社長、役員の記者会見が全国で放映されて以降、同社ホームページには3日間で約2万件近くのアクセスがあり、約50通のメールが寄せられたという。「誹謗や中傷するメールがある中で、『今回のことで社名を知った』『運送業界が人手不足ということを初めて知った。頑張ってほしい』『人材教育に力を入れている企業だと感じた』などの意見もいただき、不本意な形ではあるが、弊社や業界の現状を知ってもらう機会となった」と同社の担当者。
     社名公表について各事業者に聞いてみると、おおむね同社に同情する意見が見受けられた。静岡県の運送会社社長は「明日は我が身。今回の社名公表は大きなインパクトがあった。事業規模が同等の会社は、戦々恐々としているのではないか」と話し、埼玉県の事業者は「大手が出来ないのに、中小の我々が守ることは至難の業。現状で労働時間を守ろうとすれば仕事をセーブするしかない。売り上げは落ち、ドライバーの士気も下がり、会社の存続も危ぶまれる」と語る。
     福岡県の事業者は「中小は関係ないが、報道が過熱することで『やっぱりトラック業界・トラックドライバーはブラックだ』と世間に認識されるのは困る」と話す。一方で名前の公表は歓迎するべきことと神奈川の運送会社社長。「運送業界の現状を世間が知ることになればいい。物流子会社や大手物流会社の中抜き、業界の多層構造についてもあぶり出す必要がある。ヤマトの値上げのように世論を味方につけるべき」と話し、岐阜県の運送会社社長も「運送会社がブラックというなら、取引している荷主もブラックと言えるのではないか。そこまで引っぱり出さないと意味がない。大宝さんが見せしめ的な役割になったが、業界や世間に与えた影響は大きい」と印象を話す。愛知県の事業者は「元の運賃が安いので、協力会社も仕事を請けなかったのではないか。おのずと自社のドライバーに負担がかかる」と推測し、適正運賃の必要性を訴える。
     今回の社名公表で、運送会社の自助努力も限界に来ていることが改めて浮き彫りになったのではないか。これまでの荷主主導の物流のテーゼ(肯定意見)では、もはや物流は成立しない状況である。今こそ業界全体が一致団結してアンチテーゼを唱える時を迎えているのかもしれない。学識者が常々指摘する、荷主や消費者の要求が過剰なサービスを生み、それを成り立たせているのはドライバーの長時間労働という現状から目を背けていては、今後の物流業界、ひいては日本経済の明日はない。

     
     
     
     
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