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    長時間労働の現状 千葉地裁「仮眠は労働時間」

    2017年8月21日

     
     
     

     長時間労働が問題となって久しい。宅配貨物のドライバーがクローズアップされ、ネット通販の拡大により、昼食さえまともに取れない現状が明らかとなった。運送事業者としても、法令を違反してまでドライバーに長時間労働をさせるわけにもいかない。しかし、ドライバー不足が慢性化していることもあり、ドライバー一人当たりの負担はますます大きくなっている。トラック運送業を取り巻く「長時間労働」の現状について話を聞いた。
     千葉地裁は5月17日、イオンの子会社で警備事業を展開するイオンディライトセキュリティ(大阪市)に対して「仮眠は労働時間」として、従業員の男性(52歳)に180万円を支払うよう命じた。この男性は、「仮眠室での待機時間も警報などに対応することが決められており、会社の命令下にあった」として、「仮眠時間でも実際の業務が続いていた」と、会社に対して残業代と慰謝料合わせて690万円を求めて提訴した。
     この裁判について「運送業界もまったく同じだ」と指摘するのは建交労(東京都新宿区)の鈴木正明書記次長。「休息中であっても、指示があればクルマを走らせなければいけない。トラックには車内にベッドが付けられており、そこで仮眠することが前提となっている。これが『休息時間』と呼べるのだろうか」と話している。


     同書記次長は「地裁で結果が出ても高裁でひっくり返される前例もあり、注意深く見守る必要がある」と指摘。「昔は働いただけ稼げる職業として有名だった職業ドライバーだが、いまでは高速を使うのも自腹で、家にも帰れない、給料も安いという現状がある。結局、中小・零細事業者が適正運賃を収受し、ドライバーの給与に反映させるしかない」と話し、「中小の事業者がきっちりとした経営をできなければ、ドライバーの待遇が改善されることはない。政府の働き方改革には期待していたが…」とする。
     今回の千葉地裁判決について、弁護士の増谷嘉晃氏(ALG&Associates、東京都新宿区)は「この点に関しては、判例(最判平成14年2月28日民集56巻2号361頁、以下、「平成14年判例」)があり、千葉地裁の判決も、平成14年判例に沿うものと思われる。平成14年判例は、『労働者が実作業に従事していない仮眠時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれている』ため、労働時間に該当すると判断している。平成14年判例は、ビル管理会社の従業員のケースだが、原則、ドライバーのケースも平成14年判例の基準に従って判断されると思われ、『労働契約上の役務の提供が義務付けられている』との評価に至れば、労働時間に該当すると考えられる」とコメントしている。
     また、厚労省では長時間労働削減に向けた取り組みとして同10日から、長時間労働や賃金未払いで書類送検された企業を公表。掲載企業332社の中には、日本郵便やヤマトオートワークス、セイノースーパーエクスプレスなどの名前が挙がっている。東京商工リサーチによると、運輸業は332社中27社(8.1%)となっている。
     厚労省としては、これまでも企業の書類送検は公表されていたが、一覧として公表することで、さらに注目度を集めたい考えだ。一部報道では「厚労省が大手企業に残業時間を公表させる」と出ていたが、同省では「まったく決まっていない」と否定している。
    ■下請多層構造問題、建設業界でも弊害
     トラック運送業界で問題とされているものの一つに、下請け多層構造がある。元請けと下請けにおける運送事業者間の取引条件の改善が喫緊の課題となっている。運送業界は今後、人手不足がますます深刻化するといわれているが、下請け多層構造で問題なのは、下の層になればなるほど運賃が安くなるため、労働者の確保ができないというところにある。業界の大半を占める中小・零細事業者の経営環境が良くならない限り、人材不足の根本的な問題解決には至らない。このような問題は、トラック運送業界に限ったことではない。建築業界でも下請け多層構造による様々な弊害が問題となっている。
     建築業界では、工事内容の高度化にともなう専門化や分業化、工法の多様化への対応などで、下請け多層構造はある程度、必然的で合理的な側面もあるのは確かだ。その半面、施工管理や品質面、下請けの処遇悪化という問題を引き起こし、運送業界同様に人手不足を招く要因ともなっている。
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     この課題を解決するため、日本建設業連合会では、元請け事業者の社員にとどまらず、多層下請けの恐れがある下請け事業者の経営層、職員、職長、さらには一人親方、個人事業者を対象に「偽装請負」をはじめとした法令違反の是正を求める「施工体制における法令違反の是正」リーフレットを作成している。
     リーフレットには、労働者供給、労働者派遣の禁止、一括下請負の禁止、無許可業者の制限、主任技術者の配置義務、その他の法令順守がまとめられ、下請け多層構造を助長するような法令違反を是正するための周知徹底に取り組んでいる。
     日本建設業連合会によると、「このリーフレットの作成は、下請け多層構造による下請け事業者への処遇悪化で、若年層の人材が不足していることへの危機感がきっかけ」としており、「なかなか改善が進んでいないが、業界の発展のためには変えていかなければならない」という。
     トラック運送業界でも、元請けと下請けにおける事業者間の取引条件の改善に向け、全ての取引について原則2次下請けまでに制限するなどの取り組みを進めるとしており、今年度内をめどに「自主行動計画の策定」を目指す。

     
     
     
     
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