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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(286)人材育成について(6)事例(2)

    2020年4月13日

     
     
     

     私は幹部研修を行う時、人材育成の基本ということで、木下順二さんの夕鶴をとりあげる。夕鶴から何を学ぶかディスカッションする。学びとる感性を豊かにしていくのだ。

     

     山も野原も畑もたんぼも、みんな真っ白な雪に覆われている小さな村。その村の田んぼのまん中で鶴が一羽、ばたばたともがいている。怪我をした鶴が、苦しんでいる。この鶴を、1人の男、よひょうが助けてやる。よひょうは正直者で村一番の働き者。ある晩のこと、「ごめんください」「はい、だれだね」「あたしをあなたのおよめさんにしてくださいな」。雪の中から出てきたような、色の白い、ほっそりとした女の人、名前は、つう。つうは優しくて、よく働く、いいおよめさん。よひょうは幸せもんだ。つうは不思議なわざをもっている。ひとばんのうちに、誰も見たことのない美しい布を織りあげる。

     つうは「もう布は織らないよ」とよひょうに言う。よひょうは都へ行きたい。お金が欲しいとの欲にたぶらかされてしまった。「つうよ、もう1枚だけ織ってくれ」「よひょうさん、織ってもいいけど、わたしが織っている姿はけっして見ないでよ」。よひょうは機織り部屋をのぞいてしまう。ぼうっと、1羽の鶴の姿。美しい布を織ってつうが姿を見せる。「あんなに約束したのに見たね。もうおしまいよ」と、つうは、鶴となって空へ飛んでいく。あの田んぼの中で怪我をして苦しんでいた鶴が、よひょうの親切がうれしくて、つうという女となっておよめにきたわけだ。そして自分の羽を抜いて美しい布を織っていた……。

     この夕鶴から何を感じるか。一つは愛情の強さである。よひょうは、鶴を優しい心根で助けた。この心根に報いんと、つうはよひょうに尽した。よひょうの喜びを得んとして、自らの羽を布にして、真心で尽した。幸せな夫婦生活であった。人材育成についても、部下の心をつかむことが基本で、それは愛情を持つということだ。

     2つ目は、私欲が、人をダメにする点だ。正直者で働き者のよひょうだが、自らの欲を優先させた。つうとの「もう二度と布は織らないよ」との約束や、「けっしてのぞかないでね」との頼みを守らなかった。「都へ行きたい。お金が欲しい」との欲で、つうとの愛をけがしてしまった。つうは去っていった。心がはなれるということだ。

     3つ目は、人間の弱さである。美しい童話である。白い雪、白い鶴、これはけがれなき無償の愛を想起させる。しかし、人間には欲がある。自己管理力、セルフコントロールの大切さを知るべきだ。リーダーは、自己を律していく力がある。それが人を育てていく職場風土をつくるのだ。よひょうには、人間としての弱さがあった。それを責めるわけにはいかない。人間とはそういうものだ。しかし、愛情は人をやる気にさせるのだ。人財育成の基本は、心を開かせ、思いやりの気持ちを引き出すことでもある。    (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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