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ブログ・野口 誠一
第330回:感動に満たされた心
2011年12月5日
初めての「倒産110番」は成功したが、そのことがかえって私を苦しめ始めた。悲しいかな、わが家ならぬわがアパートは、6畳二間にすぎない。私がその一間を占領すれば、家族は生活の場を失う。この2日間だって家族は隣の一間に押し込まれ、昼夜を分かたぬ電話相談に、ろくろく眠れもしなかったのだから。2日ぐらいなら何とか我慢できても、それが毎日となったらノイローゼになるに決まっている。私はノドから手が出るほど、「事務所」が欲しくなった。
それはともかく、この2日間の経験はすっかり私を変えてしまった。無理もない。それまでの五十余年間というもの、私は自分のエゴにかかずらうことはあっても、人に尽くす、人の役に立つなどという経験はまるでなかったのだから。250本超もの電話相談に、私もスタッフもヘトヘトに疲れたが、その心は言い知れぬ「感動」に満たされていた。それは、自分たちのような失敗者でも人様の役に立てたという「感動」にほかならない。
事実、相談者のなかには会社整理の方法を知らなかったり、破産に金がかかることさえ知らない人も多くいた。そのいちいちに懇切丁寧に応ずれば、多くの人が「ありがとうございました」という。なかには泣きながら「助かりました」という人もいる。それが私たちの感動へつながっていく。
生まれて初めて味わったこの感動は、その後も私のなかに居座り続け、何かといえばひょっこり顔を出し、「早く八起会を軌道に乗せろ。倒産110番を常設しろ。世の中には助けを待っている人たちが大勢いるんだ」と迫る。どうやら感動は私の中で使命感に姿を変えてしまったようである。私はハラをくくった。「よし、八起会と心中してもいい。やれるところまでやってみよう」というハラである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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