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    「がれき運搬」法の壁に阻まれ 「再々委託」認めない

    2012年4月6日

     
     
     

     東日本大震災で大量に発生した「災害廃棄物(がれき)」を被災地以外の自治体が受け入れて処理する広域処理が進まないなか、運送事業者が運搬を仮に担おうとしても、法の壁で阻まれることがあると分かった。震災から丸1年が経過して、運送事業者のなかには受け入れの本格化を見越して準備を模索する動きがあるが、所管する行政庁には運搬手段の確保が視野に入っていない様子もうかがえる。
     環境省HPによると、大震災で発生した災害廃棄物の広域処理は、岩手、宮城の両県分のみを他の都道府県の各自治体が処理するもので、放射性物質が拡散してしまった福島県は県内で処理される。がれきの量は岩手県内に約476万トン、宮城県内に1569万トンそれぞれ発生したとされる。


     近畿地方に本社のある運送事業者は先に、同業者との会合で両県のがれきの運搬を主目的とする事業協同組合の立ち上げについて協議した。近畿地方では、どこの自治体もがれきの受け入れを表明していないが、早晩処理が本格化する可能性を見越したものだった。
     事業者らにとって協組立ち上げの利点は、運搬専用車両の開発や計画、受け入れ自治体との交渉の一本化などによる合理化がある。がれきの広域処理は国策ではあるものの、事業のスキームが通常の運輸業務とは異なることからくるクッション役にもなりうる。
     しかし、廃棄物処理法や中小企業等協同組合法は互いが矛盾する形を取りながら、この事業者らの計画と反してしまう恐れがある。どういうことなのか。
     廃棄物処理法には、ごみの不当投棄防止や反社会勢力の助長を抑制するため、「適正処理」のスキームが組み込まれている。具体的には、廃棄物の排出者と処理業者、または排出者と収集運搬事業者とは各別に委託契約を結ぶことを義務付けている。これを逆から見ると、受託業者から再受託業者に処理や収集運搬を再委託する行為は原則として禁止されているということだ。
     実際、昨年12月からがれき処理を受け入れている東京都は岩手県との間で覚書を結ぶ際、再委託禁止の原則を貫く範囲での契約にとどまっている。排出者(岩手県)から委託を直接に受ける東京都の第3セクター「東京都環境整備公社」が受託者となったが、それではさすがに処理が迅速に進まないとの実務上の判断から、昨年7月に環境省が出した「災害廃棄物の再委託に関する特例」を適用し、受託者である同公社から再委託する民間事業者(再受託者)を選定できる仕組みを採り入れている。
     こうした「原則再委託禁止」の枠組みを先ほどの運送事業者らの協組に当てはめたとき、受け入れ自治体(受託者)から受託する協組(再受託者)までの仕組みは法の枠内で可能だが、実際にトラックを保有する協組傘下の事業者への委託は再々委託となってしまう。環境省の先ほどの「特例」のなかにも「再々委託は認めない」と特記されている。
     近畿運輸局貨物課はこうした動きに戸惑っており、すぐにも認可を決定する仕組みにはなっていないことを認め、「環境省と再度協議しなければならない」としている。
     では、協組に運送許可を与えてトラックを保有させる形で、事実上の共同受注ができる方策は探れないだろうか。同貨物課は、「運送事業者で作る協組に運送事業を許可してしまえば、いわば子供の仕事を親が取りあげてしまうような形となり、協同組合法の理念に反する」としている。
     もっとも、協組を形式上の窓口として位置づけて、実際の契約は受け入れ自治体(受託者)と傘下の事業者(再受託者)とすることはできなくもない。事実、そうした形式を取る事業協組は複数の認可がされている。
     「適正処理」の要請からくる非流動的な契約と、できるだけ迅速に復興の足掛かりを作りたいとする国策。そして、運送事業者の思いが三つ巴になる局面。運輸局の担当者は、「個人的には協組化はいいアイデアだと思うが、傘下事業者と受け入れ自治体が個別に契約するというのは非現実的かもしれない」と話し、弾力的な運用が必要との考えを示している。

     
     
     
     

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