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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(216)親分肌のリーダー〈事例A〉

    2018年10月8日

     
     
     

    〈崩した血判の誓い〉

     

     トップは内心、深く反省していた。「この事態を生じさせたのは、だれのせいでもない。オレの責任だ」。トップは創業のころを思い出していた。一緒に暮らしていた若いモンが、夜中に熱を出した。38度の高熱だ。どうしたらよいか、わからない。うろたえた。トップは家の仏壇に線香を上げて、一心に祈る。

     「どうか助けてやって下さい」

     トップの家は、そのころ貧乏だった。社員に給料を払った後で、家にはカネがない。すぐさまクスリを買いに走るわけにもいかない。「朝まで辛抱しろ。そうすれば病院に連れていくからな」と励ます。一心に祈って、ふと気付くと、線香が灰になっている。この灰を1つかみして、トップは熱を出している若いモンに飲ませた。「クスリや。これで熱は下がる」。不思議とウンウンうなっていた若いモンが落ち着いてくる。若いモンいわく、「ウチのオヤジは本物のクスリは飲ませてくれなかったが、生きる勇気を飲ましてくれたよ」

     反乱軍は、トップの説得でバラバラになった。血判まで押して臨んだ交渉であったが、バラバラになった。血判とは、一人ひとりが親指を傷付けて血で押した決意文である。

     「要望が通らなければ1人残らず辞める」

     この血判が崩れていった。親指を切り過ぎて血が止まらないほどであったという誓いも、トップの説得で崩れていった。心を入れ替えて、一から働くということになった。退職した所長もカムバックすることとなった。一からの出直しである。

     A物流企業で起こった異変から、何を学ぶべきであろうか。それは物流企業の経営にとって大事なもの、部下からトップへの信頼、トップから部下の信用——といった心のつながりである。

     心のつながりを具体化するものは、日々の実のあるコミュニケーションである。物流企業のトップ、リーダーは親分肌でなければならない。親分肌とは「オレの目を見ろ、何も言うな」の世界である。慕われるトップ、リーダー、頼られる存在、安心させてくれる存在のことである。理屈ばかり言っても、人は付いてこない。建前でも、人は付いてこない。部下の面倒をしっかり見ることである。    (つづく)

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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