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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(289)人材育成について(7)事例(2)

    2020年5月18日

     
     
     

     Aさんは、35年の職業生活に、おおむね満足されている。役には就かなかったが「それもよし」といったところだ。一人娘を苦労して大学を卒業させて、その娘の就職先に、自分の会社を勧めて入社させていることでも、Aさんの「それもよし」との気持ちがわかる。

     

     このAさんとAさんの娘を見ていて、義理人情、ナニワ節という言葉が頭に浮かぶ。35年勤続の適材適所を支えていたのは、Aさんと会長との義理人情、ナニワ節である。Aさん曰く「前の社長、今の会長には、そりゃいろいろとお世話になってね。娘の中学の卒業式のときは、背広をいただきましてね。私と会長は身長がほぼ一緒なので、会長はよく服をくれるんですよ。私が入社して5年目ぐらいの時、肺を悪くして6か月入院したことがあるんですわ。その時会長が〝しっかりなおせよ。いつまでも待っているよ〟と見舞いに来て言ってくれましてね、うれしかったですよ」

     経営学の教科書には、義理人情、ナニワ節の重要性は書いていない。私は経営コンサルタントとして企業経営の現場に接していて、適材を適所に生かすには、理屈だけではうまくいかないという実感がある。ハート、心が大切である。

     B社は100人ほどの工作機械の会社である。この会社の工場で組織活性度調査のための個人面談を行った。Bさんは勤続20年、役職はナシ、住まいは社宅。「今まで勤めてこられたのは、何が支えですか」

     Bさん「私の会社には、私の生まれ育った田舎の先輩が3人います。今の工場長も同郷なんです。中学を卒業して、この会社に入ったわけですが、給料が低いし、仕事もつまらなく思えた時もあって、辞めたい、辞めたいと何度も思いましたよ。その度に先輩の顔をつぶせないと思って、ふみとどまってきました」

     「先輩である工場長は、あなたにどんなことを言っていますか」。Bさん「最近では家を買ったか、ですよ。今までの仕事のことであれこれ言われるより、生活のことで心配をかけてきました。結婚した時は嫁さんは元気か、子供が生まれて小学校へあがるようになると子供のことを聞かれましたよ」

     Bさんのタイプは職人である。管理職には向きそうにない。人それぞれである。このBさんの適材適所も義理人情、ナニワ節の力に負うところが大きい。      (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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