Now Loading...
 
  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(302)人材育成について(11)A社の事例(3)

    2020年8月31日

     
     
     

     その頃、私は社長と出会い、色々と経過を聞いた。私は社長に言った。「最近の20代の若者は、人生を甘く見ていますね。20代に限らず、一般的に甘い大人が多くなっています。簡単に辞めても生活していける時代ですからね。価値観が多様化していて、社長のような独立タイプで、モーレツ人間は少数派なんですよ。社長、考えてもみて下さい。失礼ですが、社長のところは10人に満たない小企業です。そこに入ってくるのは、それだけで価値です。社長と同じように鍛えて引っ張っていっても、よほどの変わり者でないと務まりませんよ。自分のところに入ってくれたという感謝が足りませんでしたね。オレが食わしてやっているとの思いが強すぎましたね。事実社長が食わしているのですが、その押し付けが強すぎたと思いますよ。厳しさだけでは人はついてきませんよ。優しさが必要です。もちろん優しさだけではなく、タフであることも必要です。企業にとってのタフとは、収益力のことです。会社が赤字であれば優しさもくそもないでしょうが、小企業には優しさというか、愛がなければ人はついてきませんよ」。社長「そうだね。僕も色々考えたが、今回はいい勉強になったよ。徒弟制度のような鍛え方では、誰もついてこないことがよくわかった。確かに自分中心の会社だし、ワンマンでないと1歩も進まない会社だけど、やり方を変えないといけないね」。そこで私は組織変革のプロセスとして、次の如く提起した。組織体制の立て直しのため、まず人生経験の深い高齢者を採用する。この高齢者には、社長の営業面の補佐と、内部体制の補佐を担当していただく。そして内勤体制を強化する。この内勤者は社長の事務上の秘書として活動する。こうして内部を固めて徐々に営業体制を再構築する。高齢者の採用はスムーズにいき、内勤者の採用もすぐできた。現在は営業体制の再構築中である。

     

     A社の社長は、ここで、慎重になっている。以前と同じ失敗をするくらいなら、このままでいいのではないか、と悩んでいる。そこで私は言った。「A君、B君が辞めて2か月経ちましたね。人員補充はすぐできましたね。このままでも生活は十分やっていけますが、企業としては、人を育成することにチャレンジしなければなりません。この行動が、企業の活力を生むのですよ。企業の活力は、営業開拓と人材育成の実践によって生まれますからね」

     社長は決断し、営業員の募集を行い、1人(C君)採用した。C君は28歳である。今回、社長は優しさと厳しさをうまく使っている。企業活動は、社会に貢献することであり、人を育てていくのも使命である、と悟っている。自分だけ楽して金もうけに走るならば、人を採用して確保し、定着し、育成させる手間はいらない。C君には週1回研修日を設けて、じっくりと対応している。C君の成長が社長の喜びである。

     人材育成へのチャレンジは、〝諦めない〟ことである。このチャレンジが前向きな経営姿勢を生むのだ。「どうせ採用しても、すぐ辞めてしまう。うちのような会社にくるのは落ちこぼればかりだ。人材育成なんてするだけムダだ」との思いでは、企業は育たない。熱意をもって、繰り返し、繰り返し、人材育成にチャレンジする。

     どんな企業でも、スタートは少数である。それがビジネスチャンスにのって徐々に成長していくのだ。社長1人では企業にならない。優しさと厳しさをバランス良く、人材育成に取り組むことが、企業成長の核心である。

     
     
     
     
  •  
  •  
  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
  • 「ブログ・川﨑 依邦」の 月別記事一覧

     
  • ブログ・川﨑 依邦」の新着記事

  • 物流メルマガ

    ご登録受付中 (無料)

    毎週火曜に最新ニュースをお届け!!

    ≫ メルマガ配信先の変更・解除はこちら