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    経営再生物語(303)人材育成について(12)A社の事例(1)

    2020年9月7日

     
     
     

     ・変化と刺激

     

     人材育成は、1人1人の自発性、やる気の引き出しが基本である。今回は変化と刺激の重要性について考えてみたい。

     Aさんは真面目で几帳面な性格である。Aさんは勤続35年で定年60歳を迎えた。私は縁あってAさんの送別会に出席させてもらった。仕事は総務畑が長く判で押した如くの、きちんとしたリズムで職業生活を送ってきた。「これからどうするんですか」。Aさん曰く「しばらくのんびりして好きな本でも読んだり家内と旅行します。1年くらい経ったら、またどこかで職を見つけて、働きたいと思っています」。

     1年経ってもAさんは職業人生にはカムバックできなかった。反対に老人病院に入ってしまった。聞くところによると急速にボケてしまったとのことである。定年後のAさんはたくさん買いこんだ本を読むわけでもなく、終日ぼんやりと庭を眺めてばかり。根が真面目で無趣味で外へ出る気も起きず、家でゴロゴロ。「お父さん、ポケっとしてないで一緒に買い物でもいきましょうよ」と妻が誘っても「フン」と気のない返事。変化のない日常が続く。もちろん刺激もない。Aさんはやる気がなくなった。そんなある日、久しぶりに長女が嫁ぎ先から帰ってきた。その顔を見てAさんが言った。「あなたはどちら様ですか」。

     この話を聞いて私は人材育成について、変化と刺激の重要性について、考えさせられた。成長への意欲はマンネリの日常からはわき出てこない。むしろ精神は退化する。Aさんの精神は緩んでしまった。在職中は、朝6時30分起床、いつもの通勤コースをたどって8時30分出社、そしてだいたい夕方6時30分から帰途について7時30分帰宅。雨の日も風の日もこのパターン。このパターンそのものは変化のない日常であるが、仕事という刺激がある。定年退職後はこのパターンがくずれ、ポケっとした刺激のない日々が続いてボケてしまった。

     Bさんは入社以来30年、一貫して同じ場所で机に座って事務職として庶務業務に従事している。出世の意欲もない。いわば諦めの精神に沈んでいる。「毎日毎日が同じことの繰り返しで飽きてしまいましたよ。新しいことへの関心がわいてこないのです。私の人生もこんなもんでしょうかね。このままじっとして定年ですよ」。いわば人間的成長が静止して覇気がなくなっている。

     Aさん、Bさんのケースを人材育成の観点から考えてみると変化と刺激の大切さが浮かび上がってくる。具体的には、(1)仕事のローテーション(2)新規開拓精神の育成(3)目標設定能力の育成——の3点である。   (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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