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    「ダイアローグ 対話する組織(中原淳+長岡健・著、ダイヤモンド社)

    2009年10月29日

     
     
     

     中原淳・東京大学大学総合教育研究センター准教授は、専門領域とする教育学の知見を、企業におけるコミュニケーションに活かすことを提唱している第一人者だ。『ダイアローグ 対話する組織』(共著)では、上司と部下、部署間などのコミュニケーションがうまくいかない要因を、教育や人文社会科学の歴史も交えながら解き明かし、その解決方法として「ダイアローグ(対話)」という新たな手法を提示している。


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     同准教授は、企業におけるコミュニケーションの特徴として、「(一方的な)情報伝達」、「ロジカル」などを挙げる。いずれも、「伝えるべき情報を間違いなく相手に伝える」、「筋道を立てて、抜け漏れなく伝える」として、企業研修、さらにさかのぼれば学校教育で「良きもの」として教わってきたことだ。
     しかし同著では、その手法で実現するのは「情報の移動」でしかなく(同著では「導管型コミュニケーション」として紹介)、人を動かしたり、変化をもたらしたりする、いわゆる「行動」につなげるのは難しいと説く。何年来も「常識」として、ある一形式のコミュニケーションに慣れた私たちにとって、「思いもよらない」理論である。
     たとえばこうだ。ある日、「これからウチはソリューション営業をやるぞ」と社長が旗を振ったとする。それを聞いた社員たちは、「ああ、ウチはこれからはソリューション営業をするんだな」と「理解」する。しかし、ここで「ソリューション営業とは何か」という意識の共有が図れていないと、本当の意味で「伝わった」とは言えないのではないか―と同著は指摘するのだ。
    「たとえば、ロジカルシンキングはある『課題』に対する『答え』を論理的に求めていく。しかし、その『課題そのもの』が間違っているという可能性もある」
     先ほど挙げた例で言うところの「ソリューション営業とは何か」との部分にあたる「意味付け」に重点を置き、お互いの理解を深めていくコミュニケーションとして、同著は「対話」を推奨。その「対話」を、(1)共有可能なゆるやかなテーマのもとで(2)聞き手と話し手で担われる(3)創造的なコミュニケーション行為–と定義する。
    「気をつけるべきこととしては、主語を『私』に置いてそれぞれの考えを話し合うこと。『私たち』『会社的には』などとしてはダメ」
     また、もう一点重要なポイントとして、「その場での判断は保留すること」を挙げる。つまり、「対話」は、会議のようにゴール(結論)を持たないということ。これだけ聞くと、常日頃のビジネス感覚で行くと「何も生み出さない」ように感じる人もいるかもしれない「対話」であるが、「意味付け」の過程をともにすることで、「真の課題」や「会社の目指すべきこと」を深いところで共有できるようになる。加えて、「(対話の相手が)なぜそう考えるのか」という背景を、言葉を重ねて明らかにしていくことが、相手を理解することにもつながる。
    「企業では一般的に『考えや意識を同じくすること』が重視されるが、対話は『(考えが)違っていたら丸儲け』というくらいの気持ちでやること。組織には、立場も考えも異なる人がたくさんいる。これをつなげていくには、やはり『対話をする場』を設けることだと思う。社内にカフェを作るなど、面白い取り組みをしている企業もある」
     とはいえ、「さあ、対話をしよう」と部下に言っても相手は何のことか分からない。同准教授は、「焦らず、まずは話し合いのしやすい雰囲気を作るなどできるところからやってみて欲しい」と話す。
     学術的な記述もあるが、企業で交わされそうな「会話」の事例も交えるなど、容易な文章で理解しやすい内容の同著。普段あまり触れる機会のないアカデミックな視点は、ビジネスに追われる私たちに「目からウロコ」の発見を与えてくれるはずだ。
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    ▼「ダイアローグ 対話する組織」中原淳+長岡健・著、ダイヤモンド社、1600円(税別)

     
     
     
     
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