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    ヒトがいない、カネがない、仕事がない 社長、ネットがありますよ!(吉田和彦・著、あさ出版)

    2009年12月1日

     
     
     

     運送業界と同様、サービスでの差別化を図りにくい印刷業界。DTP印刷が台頭し、インターネットの普及で紙媒体の需要も減少。業界全体が苦しんでいるなか、インターネットをうまく活用することでこの苦境を乗り切っている企業がある。その取り組みの経緯とノウハウをまとめたのが、恒信印刷(東京都板橋区)の吉田和彦社長による「ヒトがいない、カネがない、仕事がない 社長、ネットがありますよ!」だ。


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     同社は社員数40名に満たない、いわゆる「町の印刷屋」。吉田社長が「前社長の次女をお嫁にもらったのを機に」同社に入社したのは1992年のこと。その頃は設備投資をすればそれだけの受注が見込めた時代だったそうで、同社も拠点を増やすなど拡大路線をとった。しかし、バブル崩壊で急激に市況が冷え込み、仕事を獲得するために必死になる日が続いたという。
    「その頃していたのは飛び込み営業。ある程度ターゲットを絞ってから訪問していたので、5割ぐらいの確率で成約がとれた。悪くない数字ではあるが、これでは効率が良いとは言えない。何か方法はないかと考え、たどりついたのがホームページ(HP)だった。HP自体はだいぶ前からあることにはあったが、『(顧客を)集める』という認識は持っておらず、全然活かされていなかった。しかし、HP制作会社などから営業をかけられるうちに、『集客できるものなのかな』と思うようになり、自分でやってみようと考えた」
     時は2003年頃で、SEO(検索エンジン最適化)技術などが注目され始めた頃と重なる。同社長は、「Wordが使えるぐらいで、決して詳しいわけではなかった」と当時の自身のPCスキルを振り返るが、参考書やセミナーへの参加などを通じて、独学でHP制作のノウハウを習得していった。
    「とにかく、毎日取り組んだ。丸1日かかりきりのこともあった。良さそうなHPを見て真似たりもした」
     また、HP制作の本を参考にするだけではなく、ビジネス書のエッセンスや、営業時代の経験で身に付いたテクニックも取り入れたという。
    「HPの文章を書くにも、『どう伝えたら興味を持ってもらえるのか』と考え、自社のメリットを羅列するのではなく、『ウチが仕事をするとこういうことができます』という『結果』が伝わるようにした」
     工夫を重ねることで、2004―5年頃より次第に問合せが増え、「思うような結果が出てきた」と同社長。テレビや雑誌などのメディアで取り上げられるようになるなど、予想外の効果も。また、HPと並行し、その黎明期からブログも開始。ブログ上のつながりを通じて、他では得られないような業界外とのパイプもできたという。
    「本業に関して言えば、端的に言うと『良い仕事』が来るようになった。HPに取り組む前は正直、儲からない仕事でも来ればやっていた。しかし、今はわざわざウチのHPを探して来てくれるような仕事が増えた。劇的に仕事が増えたということはないが、利益率が上がるなどのよい結果が得られている」
     社員にも変化が見られたという。
    「HPがしっかりしてくると、お客さまからの問合せのパターンがある程度決まってきて、それに対してしっかり答えられるようになった。料金もオープンにしているため回答もしやすい。これにより、社員に任せられる部分が大きくなり、結果として社員自らが考えて動くようになった」
     とはいえ、社員が成長したとしても、「HPの制作は社長が担うべき」の信念は変わらない。
    「社長がやるのがいちばんスピードが早い。また、会社のことをいちばん知っているのも社長だから、想いもいちばん込められる。大事なのはデザインの良さではない。『どういう会社に見せたいのか』、『どういうお客さんに来てほしいのか』というところまで考え抜いてつくること」
     めざすのは「社員が『自慢したい』と思える会社」だという。
    「テレビに私が出たりすると、社員は周囲に『出るぞ』と自慢しているようだ。売上や利益をいかに伸ばすかということももちろん考えるが、まずは社員とその家族に喜んでもらえる会社にしなくてはならない。そのためにHPは非常に有効なツール」
     HP制作に関する相談を受けることも増えたという同社長。これまでの成功を振り返り、「印刷業というのも良かったのだろう。周りが(HPを)やっていないため目立つことができた」と振り返る。
    「成熟産業で、まだネットが活性化していない業界はこれが当てはまる。物流業界もそうなのではないか」
     本まで出版した同社長も、数年前までは苦境にあえぐ一経営者だった。タイトルにある通り、「仕事がない」いまだからこそ、チャレンジしてみる価値はあるかもしれない。
    ▼「ヒトがいない、カネがない、仕事がない 社長、ネットがありますよ!」吉田和彦・著、あさ出版、1500円(税別)
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