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    再起を図る協同組合 「加算式」導入で活性化めざす

    2011年6月28日

     
     
     

     組合員の減少→持ち分の確定→保証金の取り崩し──。
    積み上げた資産が大きくなったトラックの事業協同組合では、こうした事柄が一連の流れのように起きている。「過去にピークを迎えた組合が資産の帰属を確定させ、新たな組合員を迎え入れることによって再起を図る」と言えば、一連の流れは事の本質を突いているようには見えるが、ある関係者は「流れに必然性はなく、実験場」と話している。
     兵庫県下で随一といわれる尼崎運輸事業協同組合(尼運協)。先月末の通常総会で定款を2点変更した。一つは、新たに加入を希望する事業者に対して、これまで求めてきた500万円程度の加入金を廃止し、一律5万円の「加入手数料」に切り替えるもの。そしてもう一つが、組合在籍時点では概念上にしか生じない「持ち分」に相当する、組合員資産の流動化に関するものだ。


     尼運協は10年前には70社を超える組合員を擁したものの、廃業・倒産を原因とした組合員の漸減傾向に歯止めがかからず、今年3月末時点で52社にまで落ち込んだ。500万円の加入金をわざわざ寝かせることになる組合に、新たに加入する事業者はほとんどなかった。「50社を割ると組合の運営が難しくなる」(事務局)との判断があり、1年前から内外で対策を協議してきた。
     500万円の加入金は、現在の組合正味財産を1組合員が持つ出資単位で割った金額として尼運協が毎年算出しているものだ。2億7600万円の正味財産を1組合員あたりの出資単位53口で除すると、およそ520万円となる。これは、既存組合員が持つ「権利としての資産」を、新たに加入してくる事業者の権利と分けることで、既存組合員の保護を図るもので、持ち分とも呼ばれる。所有と経営が未分離な経営形態の一つと位置付けることもできる。
     新たな組合員を入れて活性化したいが、既存組合員の権利は守らなければならない。相容れない二つの要請を結びつけたのが、「加算式」と呼ばれる手法だ。尼運協などによると、加算式は既存組合員が持つ権利としての資産を、組合に在籍したまま認めるもの。具体的には、「持ち分は組合員が脱会するときにしか生じないが、在籍のまま認める」(尼運協)という。つまり持ち分が現組合員の権利なのだから、組合員に返還することが理論上は可能になる。
     しかし、出資金から持ち分は法的に出資者に返還することは無理なため、例えば別途に組合員が組合に差し入れた保証金を返還することなどは可能という。もっとも、燃料の共同購入事業に差し入れた保証金などの場合、燃料価格が流動的な昨今では、なかなか実際の返還には結びつかないという別の要因が生じることはある。
     加算式の導入は、新規に加入しようとする事業者と既存組合員の利害調整という効果につながるものと関係者はみている。兵庫県の単協を束ねる兵貨協連も、同様の制度の導入を検討する勉強会を7月に開催する。傘下43組合がそれぞれに持つ持ち分は288万円。KIT利用を推進する組合を新たに同連合会主導で立ち上げて加入させたいとしているが、新たに立ち上げた組合がそれだけの潤沢な資産を寝かせられないのは、尼運協における事業会社と一緒だ。松原丈夫会長は5月の通常総会で、「既存組合員の権利について法的な研究が必要」と述べるなど、加算式を前提にした枠組みを念頭に置いていると見られる。
     関係者によると、加算式はこれまでの枠組みでも導入は可能で、法改定などを受けたものではない。関係者は、「他の枠組みも考えられる。県下の他の業界団体の組合でも加算式を採用しているのは数えるほどで、運輸事業では尼運協がはじめて。実験場だと思っている」と話す。
     組合の債権者にあたる立場の燃料業者などからは、「出資金と保証金は、与信上の二重底の役割。出資金は債権者保護には役立つが、保証金相当額を組合員に返還するとなると組合が担保すべき底が1枚奪われたようなもの」と、与信の環境に変化が生じるとの指摘もある。

     
     
     
     

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